経済行動の単位は大まかに個人と企業に区分することができる。租税や社会保障などの国民負担もその単位で課せられることが多い。今回はOECD(経済協力開発機構)の公開データベース「OECD.Stat」の公開値(※)を基に、OECD加盟国限定ではあるが、企業における国民負担のうち租税に該当する法人税(法人所得税)について、諸外国の実情をその国のGDPと税額との比率の観点から確認する。
徴収絶対額は国毎に利用通貨が異なり、米ドルベースで比較しても為替の変動が大きく影響してしまう。そこでそれぞれの国のGDPの何%に該当するかで確認する。要は個々の国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値と比較して、その国の企業が納めている法人税はどれほどの割合に当たるのかを示した値。この値が大きいほど、企業にとっては負担が大きいと判断できる。
実データは原則2018年が最新だが、一部の国ではまだ2018年分が算出されていないため、その国の場合は2017年の値を適用している。
もっとも値が大きいのはノルウェーで6.0%。つまりノルウェーではGDPの6.0%に該当する金額を同国内にある法人が法人税として納めていることになる。次いでルクセンブルクの5.9%、オーストラリアの5.3%、ニュージーランドの5.1%が続く。
日本はといえば第8位の4.1%。OECD平均の3.0%と比較しても、随分と高い位置にある。イギリスの2.9%、アメリカ合衆国の1.1%と比べ、大きな差がある≒企業が税負担の上では過ごしにくい状態にあることが改めて認識できる。
今件について取得できるデータの範囲内で、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ合衆国)、そして日本の近隣諸国として韓国、さらにOECD平均とG7平均に関して、経年推移を見たのが次のグラフ。日本の値は影をつけて強調している。
今値は法人所得税の総額とGDPの双方で算出されるため、景況感と各種法人税制双方の影響を受ける。そのためグラフの値の上下感がやや大きいものの、例えば韓国は次第に企業負担が増えている、ドイツは比較的低い状態が維持されている、アメリカ合衆国は1980年代半ばにかけて下落をしてその後は横ばいなどの実情が見て取れる。
日本はといえば、前世紀ではほぼ対象国の中ではトップの、しかも群を抜く形で高い値を示し、今世紀に入ってやや下落をしたものの、それでも高い値は維持されたままとなっている。他国からの企業誘致の観点では、大いに不利な状況には違いない。
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※OECD.Statの公開値
言葉の定義は次の通り。国に対する金銭的な負担(国民負担)は大きく租税と社会保障に分けられる。図式としては国民負担=租税負担+社会保障負担。OECDでは社会保障負担に関して「Social security contributions」で定義をしているが、それによれば将来における何らかの不利益に対して国から便益(社会給付)を受ける資格を得るために必要な強制的支払いであると定義している。具体的には事故や障害、病気に対するサポート、老化や障害などに対する年金支払い、医療費などへの対応などが該当する。日本ならば健康保険料や年金保険料が該当する。会社組織の場合、従業員が支払う額に加え、会社側が負担する額も含まれる。社会保障や租税の仕組みは国々で異なるため、個々の値を単純比較するのは問題が生じるが、OECD側では極力同一の基準で合算し、比較ができるような値として公開している。
今回精査対象となる法人税(法人所得税)の定義は次の通り。
・法人所得税
「1200 Taxes on income, profits and capital gains of corporates」。法人の所得(収入から経費や控除を引いたもの)に課せられる税。国と地方の合算。日本ならば地方税の事業税も含まれる。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。
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