第五章 『メイクとの出会い』
大学の入学式は「人生で恐怖を覚えた状況」ベスト3に入るだろう。
高校ではメイクをしている子もピアス穴を開けている子もいたけれど、そういったおしゃれを楽しむのはほとんどが放課後や休日。授業中は勉強の邪魔だし、すっぴん寝ぐせに牛乳瓶の底のような眼鏡姿の子も珍しくはなかった。
そのモードのまま真っ黒の髪で無難なスーツを着て向かった入学式。AO入試だか内部進学だかですでにグループが出来上がっており、私の席の斜め前は金髪、その隣は拡張ピアス、横は思いっきりギャルメイクで、前には剃りこみをした子。
式の間中、知りうる限りの聖書の一節を口の中で唱え続け、終わった瞬間、親友たちに涙目で電話した。
「ここに馴染むの、無理かもしれん……」
次の休みには叔母と一緒にデパートのコスメ売り場へと向かった。
BAさんはみんな綺麗で大人で、私なんかが質問していいんだろうか……としり込みしたけれど、思い切って話しかけるとみんな丁寧で優しかった。
悩みに悩んで選んだのはお姫様が使っていそうなかわいいピンクのアイシャドウ。
家に帰ってももったいなくてしばらく開けられなかった。
ほうっと、うっとり眺めていたあの時間。どんなに手持ちのコスメが増えても、未だにあの時の胸の高鳴りは忘れられない。
宇垣美里にQ&A
Q. 宇垣さんが普段洋服を買うときに気をつけていることはありますか? 後悔しない買い物のコツとか知りたいです。(28歳・女性)
出来る限り試着はする! 着てみたら合わなかったとか、思ってたのと違ったとかが一番残念な気持ちになるので……。あとは家にある自分の持ち服と組み合わせが2つ3つ考えられるかどうか……とかいいつつ、結局どんなに使いづらかろうと、どこで着るの?って感じであろうと、一目惚れしちゃえば買わずにいられないのが現状。悩む理由が「その服が安いから」なら買わない。悩む理由が「その服が高い」ことならその後一週間塩舐めて暮らしてでも買う!
宇垣 美里(うがき みさと)
兵庫県出身。2019年3月にTBSテレビを退社し、4月からフリーのアナウンサーとして活躍中。無類のコスメ好きとしても有名で、コラムやエッセイなど執筆活動も行っている。
……
Text:Misato Ugaki Photo:Kota Shouji Styling:Mana Kogiso(io) Hair&Make-up:Sayoko Yoshizaki(io) Composition Mayuko Kobayashi
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