麻疹(はしか)は、一度感染して治ってしまうと、免疫がついて通常は生涯にわったってかかることはありません。免疫は「疫病を免(まぬが)れる」と書きますが、その意味がよくわかります。ただ、みなさん、不思議に思ったことはないですか。麻疹に一度かかれば二度かからないのであれば、そのうちにみな麻疹に対する免疫ができて、麻疹は流行しなくなるはずではないでしょうか? 実際、外界から隔離された小さな集団ではそうなります。しかし、ある程度の以上の大きさの集団では、麻疹に対する免疫を持たない個体が次々と生まれてきますので、麻疹はなくなりません。
江戸時代では数十年おきに麻疹が大流行したそうです。ひとたび大流行が起きると多くの人が免疫を持つようになり、流行はいったんは落ち着きます。しかし、流行以降に生まれた子どもたちは免疫を持ちません。免疫を持たない人が一定数以上に増えた江戸の町に、地方で細々と生き残った麻疹ウイルスが入り込むと、再び大流行します。江戸時代は麻疹は「命定め」と呼ばれ恐れられていました。江戸時代だけではありません。1960年ごろまでは日本で年間に数千人もの人が麻疹が原因で死亡していました。死亡者の多くは子どもでした。
医学が進み栄養状態が改善した現在でも、麻疹にかかると1000人に1人が亡くなり、30%の人が肺炎などの合併症を起こすと言われています。しかし、現在の日本では麻疹による死亡者はほとんどいません。2002年の麻疹による死亡数は10人で、以降はずっと1桁が続き、ゼロの年も珍しくありません。もちろん、ワクチンのおかげです。感染後に自然についた免疫であっても、ワクチンによる免疫であっても、集団の中で免疫を持つ人が十分にいれば、麻疹は流行しません。麻疹ウイルスはきわめて感染力が強く、まったく免疫を持つ人がいない集団では1人の感染者が約15人に感染させます。逆算すれば、15人中14人以上が免疫を持っていれば、1人の感染者から感染する人数は1人以下になり、感染は収束します。これを「集団免疫」と言います。
集団免疫があれば、免疫を持っていない人も感染症にかかりません。免疫を抑制する薬を飲んでいる人やワクチンを接種しても十分な免疫がつかない人、そして何よりもワクチン接種前の赤ちゃんは免疫を持ちません。現在の日本では麻疹は排除状態にあり、日本の麻疹は輸入例および輸入例を発端とした事例のみです。現在の日本で麻疹の死亡者がほとんどいないのは、みなさんがワクチンを接種して、こうした人たちを守っているからです。ありがとうございます。
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