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前回は公衆サービス終了を目前に控えたタイミングということもあり、自営PHS「sXGP」について紹介した。今回は同様に今後の企業内ネットワークとなる「ローカル5G」と「プライベート5G」を解説し、sXGPと併せて3つの方式を比較しよう。
ローカル5Gは2019年12月に制度化され、電波の周波数帯が割り当てられて利用可能になった。工場内や敷地内に自社専用のコアネットワーク(コア)設備や基地局を設置して構築する5Gネットワークだ。キャリアの5Gとローカル5Gには図1のように周波数帯が割り当てられている。
ローカル5G(1)〜(3)は2020年12月に利用可能になる予定だ。この中で(1)の4.6G〜4.8GHz帯は屋外では使用できない。屋内でも一部地域で使用できない。(2)の4.8G〜4.9GHz帯は屋内利用に制限はないものの、一部地域では屋外利用できないといった制限がある。2020年12月の制度改正では、後述するSAタイプのローカル5Gも構築可能になる。
5Gは「NSA」(Non Stand Alone)と「SA」(Stand Alone)の2方式に分かれる。5Gコアの製品が出る前に5Gネットワークの構築を可能にするのがNSAの狙いだ。図2のようにNSAでは4G(LTE)コアを使用し、制御信号は4G基地局を使う。データ通信のみ5G基地局を使用する。
SAはコア、基地局とも5G設備を利用する。制御信号、データともに5G基地局を使う。
Wi-Fiと比較した場合のNSAのメリットは?
NSAを用いたローカル5Gの構成例を図3に示す。工場内で無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)を5Gでコントロールし、部材の運搬やマシナリーセンターへのセットを自動化する。Wi-Fiと比較して電波干渉の心配がないこと、高速であることがメリットだ。
ただし、NSAでは5Gの3つの特徴「超高速」「超低遅延」「多端末接続」のうち、超高速しか実現できない。
電話はスマートフォンを使ったIP電話として実現する。キャリアの電波を用いていないため、キャリアの携帯電話サービスは使えない。内線/外線通話をつかさどるIP-PBX(IP Private Branch eXchanger:IP電話対応の構内交換機)の他、採用するローカル5Gネットワークで使用できるスマートフォンとそのスマートフォンで使える通話アプリケーション(ソフトフォン)が必要だ。
ここで心配なのはローカル5Gで使えるスマートフォンがあるかどうかだ。キャリアが使う5Gスマートフォンはキャリアの周波数帯をサポートする。だが、わざわざローカル5Gの周波数帯をサポートする可能性は低い。キャリアには1000万単位のスマートフォンユーザーがいるが、ローカル5Gでのスマートフォンユーザーは桁違いに少ないはずだからだ。
SAを用いたローカル5Gのメリットは
SAのローカル5Gの構成は図4のようになる。コア、基地局とも5G設備となり、5Gの3つの特徴全てを実現できる。5Gネットワークを仮想的に複数のネットワークに分けて使うスライシングにも対応する。必要となる速度や遅延、信頼性などの条件の違いに応じてネットワークをスライシングすることで、5Gネットワークをより効果的に利用し、セキュリティを高めることができる。
電話をIP電話として実現する点はNSAと変わらないし、使えるスマートフォンがあるかどうか懸念があることも同様だ。電話はローカル5Gのアキレス腱(けん)といえるだろう。電話なんてどうでもよい、IoTができればよい、などという意見もあるだろう。だが電話が不必要な工場や病院など存在しないことを忘れてはいけない。
プライベート5Gは導入のハードルが低く、電話の問題もない
プライベート5Gはキャリアに割り当てられた電波を使い、キャリアがサービスとして企業内5Gネットワークを提供するものだ。企業が設備投資する必要はないし、ローカル5Gのように免許を取る面倒な手続きも必要ない。
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