(C)平尾アウリ/徳間書店
大好きなアイドルがいる。彼女は生きているだけでファンサ。だから人生を賭けて推します! 「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(原作/アニメ)は地下アイドルChamJamの市井舞菜と、彼女を命がけで推すドルオタえりぴよを描いた、情熱的でコミカルな物語。
4話でついに始まってしまった、地獄のイベント人気投票。ファンのオタクもつらい、アイドルたちもつらい。しかし向き合わねばならぬ。戦ええりぴよ! そんな中、今のChamJamに入る前から一人の少女を推し続ける男がいた……。
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恐怖! 人気投票イベント
アイドルグループといえば人気投票……とは限らないですが、ChamJamには人気を計る機会が度々あるようです。一つはCD売上枚数と握手会。えりぴよがいつも買い占めてるアレ。毎回露骨に差が出てしまい、いわゆるトップ3の五十嵐れお、松山空音、伯方眞妃は前列組で、事務所からプッシュされています。先日行われたガールズコレクションでもこの3人は確定枠でした。
数字って怖い!(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
一方後列組の寺本優佳、水守ゆめ莉、横田文、市井舞菜は人気はワンランク下。序列がはっきり目に見えています。特にえりぴよが激推している舞菜に至っては、単推しがえりぴよ一人しかいないという惨状。最近玲奈という舞菜推し仲間ができたから2人か。
えぐい話です。同じ仲良くやっていくグループの中で差がついてしまうなんて。これに関してはえりぴよも頭が痛い。舞菜を最下位にさせたくないのに…。
ところでこの一覧表、考察しがいがあります。丸の数はイメージとしての人気総量比(本当はもっと多い)です。原作は棒グラフだったのが、丸の数でより具体的に見えるようになりました。れおは永遠のセンター、ダントツ一位なのはゆらぎません。空音は二歩くらい引けを取るものの2位安定といったところ。しかし前列組の眞妃と後列組の優佳、かなり競っています。
アイドル悲喜こもごも(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
ChamJamは比較的仲のいいグループなので、人気投票に対しては賛否両論。中でもおっとりしていて気の優しいゆめ莉は、このシステムが苦手なようです。「いやだー! 人気投票やだ…結果で立ち位置変わるのもやだ…」自分のこともありますが、眞妃が後列に下がるのが怖いらしい。
悲しむ子もいれば、励ます子もいる(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
ゆめ莉と仲がいい(どころじゃなさそうですが…?)眞妃は「大丈夫だよ、ゆめは。頑張ってるのファンの人たちいつも見てくれてるんだし」と自分のことよりもゆめ莉のことを応援しているスタンス。心に余裕を持って、人気投票で困惑しないように励ましています。
周囲期にせず野心を口にする子ってすがすがしい(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
一方野心家の横田文は「頑張ればセンターになれるかもしんないんだよ!? 私ちょー頑張るから!」とこの人気投票をチャンスと捉えている様子。普段妹系として売っている彼女の気の強いところがビシッと出ています。彼女はこの後も他の優しいChamJamメンバーとちょっと違って、常に臨戦態勢で人気を狙うキャラクターとして描かれています。
興味のない子もいるだろう(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
「私はいつもどおりでいいよー。スリートップとか忙しそうじゃん」とマイペースを貫き、純粋にあんまり興味がないのが優佳。天然不思議ちゃんな彼女は、発言が珍妙になりがちですが、おそらく素。こういうところがファンに好かれてじわじわ人気を伸ばしているようです。こういう子なのでとがった文とは売り言葉に買い言葉な関係なようですが、それは仲のいい証拠なのでニヤニヤして見ていよう。
では最下位の舞菜とトップのれおはというと、かなり心中は複雑。お互い人気投票に苦しみを感じている同士だから。舞菜に至っては日々最下位でさらされているのに、さらに露骨に名前が並ぶのは悲しみしかない。残酷な世界。
れおは舞菜の良き理解者です(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
舞菜は普段の人気のなさもあって、常に消極的。しかし彼女が不安そうにしている時、れおは寄り添ってくれます。
れお「わたしもあんまり好きじゃないかな、こういう順位付けみたいなの…でもね」「ファンの人のこと信じてみて」
自分を全力で応援してくれるえりぴよのことをいつも考えてしまう舞菜。彼女の気持ちは、今はトップだけどかつて心に傷を負い続けていたれおには痛いほどよく分かるらしい。人気投票は嫌だけど、そこで見つけられるファンとの絆があるのを、れおは知っている。
最下位だったれお
今回、数年前れおが在籍していたアイドルグループ「☆MELTY☆」の様子が描かれていました。そこそこ大きいインディーズアイドルグループでした。人気投票でのれおは、ダントツで最下位でした。
左端。これがかつてのれおの姿(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
握手会では自分のところに誰も来ない。まるで今の舞菜か、あるいはそれ以下。
アイドルの世界ってなんて残酷なんだろう、人気順が出るだけならまだしも、それが毎回衆目にさらされ、逃げることも許されない。れおはこの状況に耐え続けていました。誰も悪くはないのに(えりぴよ論だと、ChamJamの場合は順位をつける運営が悪いらしい、ということらしいけど……)。人気というのも、歌やダンスのうまさだけでなく、ビジュアルや対応の仕方やSNS発信など、あらゆる要素を加味してのこと。でも運も大きい。今のれおの大活躍を見ていると、☆MELTY☆時代はいろいろかみ合わないものがあったんでしょう。
マンガでもえぐいシーンなんですが、アニメだとれおの頭に何も入ってこなくて、音のない世界が続いている描写が入り、より悲惨さが際立ちます。
光(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
でも彼女を信じ続けて、応援し続けている人間がいました。くまさです。
くまさ「れおちゃん! 次こそは、絶対に僕がれおちゃんを1位にさせるから。だから…信じて」
このくまさの姿、今の舞菜とえりぴよの関係を彷彿(ほうふつ)とさせます。自分のことを信じてくれる人がいる。僕を信じて欲しい、と応援してくれる人がいる。
☆MELTY☆解散後、れおはChamJamに移籍し、センターの座を不動のものにしています。そこには以前と変わらず、全力で応援し続けるくまさの姿がありました。
アイドルはファンに救われている(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
れお「くまささん…あの時「次」こそは私を1位にしてくれるって…だけどグループが解散して「次」がなくなっちゃって…でも…私はまだ、信じ続けていい?」
チェキを撮って渡すれおとくまさの関係は、一人のアイドルと一人のファン。それ以上でもそれ以下でもない。れおはアイドルとして誰かを特別にしないようわきまえられるプロだし、くまさはアイドルの深いところに踏み込まないようにする真摯なファン。だからこそ、推す、押される関係は何物にも代えがたい特別なものになっています。
くまさ「もちろん! 僕はやっと約束を果たせる」
推すことは苦じゃない。夢であり喜び。アイドルはその力をもらって、全力でファンに幸せな時間を与える。このループが2人の間では強固な絆になっています。
くまさは以前、自分が推す理由の一端を話していたことがあります。「僕はね、僕のことなんかを相手してくれるのは、れおがアイドルって仕事してるからこそだと思うから…僕は誰の一番にもなれないって分かってますから、僕が一番れおのことを好きでいたいんです」
彼のファン魂は、感謝と喜びゆえの見返りを求めないものだから、とても一途です。
「あなたはここに来るべきです」
配るよねー大閃光(4話)
れおの生誕。実行はファンの間で行うようで、生誕委員長はくまさでした。えりぴよはお手伝いしているものの、壊滅的なセンスのなさと舞菜のためのバイト地獄で全然役に立たなかった様子。基はメッセージカード集め係。
会場を盛り上げるべく、大閃光(めちゃくちゃ明るく光るペンライト)をライブの観客全員に配布。裏方的にくまさの細やかな気遣いが払われた準備活動が行われます。
できることは何でもしたい。でもでしゃばりたくはない。くまさの性格がよく出ているシーンです。
いわゆる「トップオタ」。アイドルファンの中でも一番に熱心に推している存在。と言ってもくまさの場合、れおから認められたいという承認欲求はなく、「一番好きでいたい」とは言っていても他のファンと争うでもありません。れおのファンが増えることを喜び、ただひたすらに愛を注ぐ。
真摯な人は愛される(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
今回の名シーンの一つ。生誕の準備が忙しく、全員に大閃光を配るなどしていたくまさ。当然入るのは会場に入るのはラスト。彼はそれでいいと思っていました。しかしえりぴよは気を利かせて、彼のために最前列の場所取りをしていました。れおファンのオタク仲間が叫びます。
「くまささん! ここに来るべきですよ!」「ほら、道をあけたあけた」「生誕委員長のお通りだー」
推しのアイドルのために頑張り続ける、模範的なよいオタク、くまさ。彼が多くの人に一目置かれているのが分かる瞬間です。
くまさは、あくまでもファンの一人(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
観客席の最前列に立つくまさ。センターとして立ち、生誕を祝われるれお。くまさは目の前にれおがいてくれることをそっと喜び、れおはくまさが応援に必ず来てくれることを心の支えにしています。れおは一瞬だけくまさを見るシーンがあります。本当に一瞬。でもすぐに「みんなの」れおになります。
アイドルとファンって、なんて幸せで、なんて切ない関係なんだろう。いっぱいお互い愛を注いでいても、それはアイドルとファンだから。その一線をわきまえ続けさえすれば、最高の思い出になる。
「次こそは、絶対に僕がれおちゃんを1位にさせるから」という約束。それは今はグループ内人気投票かもしれない。でもそこで1位になったからと言って終わりじゃない。アイドルフェスの、地域の、そして日本の1位と、夢はどこまでも広がる。きっとくまさは見返りを求めず、れおを推し続けるし、れおは今くまさに推してもらっている感謝をずっと忘れないはず。
それをあえて、双方とも言わない。なんてエモーショナルなんだろう。
ゆめ莉と眞妃の気になる関係
あらー?(4話) (C) 平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会
4話はアイドル運動会やハロウィーンコスプレもあり、華やかな回でした。文がすっ転んだりとドタバタも繰り返す中、気になるのはゆめ莉と眞妃の関係。
気が弱くておとなしいおっとりしたゆめ莉。お姉さんっぽく落ち着いた女性の眞妃。以前から2人はとりわけ仲がいい。一緒に居たい、並びたい、頑張りたい、相手にもっと伸びてもらいたい、という思いが強く、共に手を取り合う関係になっています。特に弱気なゆめ莉に眞妃が手を差し伸べるシーンが多い中、人気投票への不安を払拭すべく運動会中に語り合うシーンは、2人だけの世界。この2人の関係は原作ではかなり濃密に描かれているので、要チェック。
ChamJamのメンバーは先回今回とかなり濃い目に見せ場が増えてきました。視聴者側も人気投票に参加する気持ちで7人のアイドルたちをチェックしよう。アニメのファンの間ではおそらく、天然暴走娘・優佳が人気なんじゃないかと踏んでいます。どうかな。ぼくは文に1票入れるね。
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January 31, 2020
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