アメコミ映画大躍進の年に生まれたインド発の本格ヒーロー映画!
『フライング・ジャット』は2016年に製作されたインド映画です。ググるときに間違えないでください。「ジェット」ではなく「ジャット」です。
ジャットとは、インド~パキスタンに住むジャット族のことで、多くがシク教徒(あの印象的なターバンを巻いている人たち)なんだそうです。とはいえ『バーフバリ』シリーズ(2015年~)のような歴史アクションではありません。現代を舞台にした、ボリウッド発のスーパーヒーロー映画です。
2016年といえば、スパイダーマンが登場した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ドクター・ストレンジ』の公開年で、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が盛り上がっていたし、DCコミックスも負けじと『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』を発表した年。アメコミ・ヒーローものがハリウッドの中心となり、世界中でヒットしはじめていました。こうした流行をインド映画界が採り入れて作った作品なのでしょう。
母親お手製のコスチューム! 飛べるのに高所恐怖症!! コミカルだけど正統派!!!
ある事件がきっかけで、アモンという青年の肉体に神木を通じて神の力が宿り、超人となります。アモンは学校で武術の先生をしていて身体能力は高いのですが、ちょっと臆病。信仰心の厚い、猛烈な母親に仕切られている。そして、その母親から「あんたは神の化身なんだから困っている人を助けなさい」とプレッシャーをかけられ、母お手製のコスチュームを纒いヒーローとして活躍するはめになります。
アモンは空も飛べるのですが、高所恐怖症なので地上3メートルくらいのところを飛行します。それでも街のヒーローとして人々の憧れとなっていく彼の前に、スーパーヴィランが現れます。この世の汚染大気や廃棄物の毒素を吸収してパワーを得る怪人、ラーカです。果たして、この強敵を倒すことができるのか?
面白いのが、主人公と母親がそれこそ『マン・オブ・スティール』(2013年)や『ファンタスティック・フォー』(2015年)、『インクレディブル・ハルク』(2008年)といった映画を観ながら、ヒーローのポーズや飛び方を研究するところ。また、彼自身がブルース・リーに憧れているという設定があり、リーのポーズをマネしたり。したがって、アクションもスーパーマン×ブルース・リーで楽しませてくれます。
一見アメリカのヒーロー映画のパロディに見えますが、これぞインド映画! な歌と踊りのシーンは出てくるし、コミカルなシーンも多いけれど決してコメディではなく、正統派のスーパーヒーローものです。
バーフバリたちと一緒にインド版アベンジャーズ結成希望!
僕がこの映画を気に入ったのは、主人公アモンを演じるタイガー・シュロフの魅力。このヒーローは、いわゆる目を覆うドミノマスク(※ミスター・インクレディブルとかグリーン・ランタンを思い浮かべてください)をつけています。
こういうヒーローの場合、本来の目力や目が美しくないとカッコよくならないのです。タイガー・シュロフの、まさに“きらりと光る涼しい目”が素敵で、ヒーローとして合格。そしてクライマックスで、シク教徒としての重要なアイデンティティであるターバンを巻き、フライング・ジャット(空飛ぶシク教徒/ジャット族)となるのです。
ここは「インドの山奥で……♪」修行した日本の伝説の特撮ヒーロー、レインボーマンを思わせるルックスで嬉しくなりました。神=自然の使いであるフライング・ジャットと、文明社会の環境汚染が生んだラーカの戦いというのも寓話的で面白いです。
なお、このラーカを演じるのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)で人形の頭を股間にぶらさげたインパクト大の巨漢、リクタス・エレクタスを演じたネイサン・ジョーンズ。今回もクレイジーに暴れまくります。
本作を観ているうちに、バーフバリとロボットのチッティ(『ロボット』シリーズ)、そしてフライング・ジャットで、インド版『アベンジャーズ』とか作ったらいいのに、と妄想してしまいました。
文:杉山すぴ豊
『フライング・ジャット』はCS映画専門チャンネル ムービープラスにて2020年3~4月放送
"恐怖" - Google ニュース
March 09, 2020 at 10:11AM
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