ハンドルが小さいほどクイックになる!
昔、1980年代ぐらいまでは、走り屋にとってステアリングを交換するのはわりと定番のチューニングだった。当時の国産スポーツカー、とくに若者が乗る1.3リッターや1.6リッタークラスのスポーツモデルの純正ハンドルは、樹脂製で握りも細くじつにチープでパワステもエアバッグもなかったので、純正よりもやや小径なナルディやモモの本革ハンドルに人気があった。
なぜ小径が人気だったかというと、ハンドルの径が小さくなると少しの操作でより大きな舵角がつくため。つまりクイックな反応=スポーティーなフィーリングが好まれたというわけ。またレーシングカーのハンドルが小径だったので、ファッション的にも小径ハンドルにあこがれたという面もある。
一方で、小径ハンドルはテコの働きが弱くなるので、ハンドルは重たくなり、より大きな力を入れないと切れなくなる。直線的な道路を走るにはいいが、車庫入れや狭い道での切り返しなどには向いていない……。またクイックになるということはハンドル操作がデリケートになり、反応がシビアなぶん、長距離ドライブでは疲れやすい。
以前は保安基準でハンドルは丸型で直径350mm以上という決まりがあったが、現在はD型でもOKで、350mm以下でも車検は通る。しかし、街乗りから高速道路、車庫入れからロングドライブまでを考えると乗用車の場合、小型車360〜370mmぐらい、大型車で380〜390mmぐらいが標準になっている。
大型車のハンドルは急ハンドルになりにくい特性
一方、トラックやバスは現在でもかなり大きい。それこそ1990年代前半までは直径が500mmぐらいが当たり前だったし、いまでも450〜460mmぐらいがスタンダード。トラックやバスでもパワーステアリングが標準なので、もっと小さくなってもいいような気がするが、トラックやバスのハンドルの径が大きいのは昔の名残というわけではない。
トラックやバスの車体は、長く、重心も高く、タイヤも大きい。大事な人や荷物も多く積むので、クイックなハンドルではバランスにも悪影響を与えやすい。重心が高いクルマは、急ハンドルになりにくい特性の方が安全なわけだ。
また、乗用車よりもホイールベースがずっと長い車体で交差点を同じように曲がらなければいけないので、ハンドルの切れ角もかなり大きい(FFや4WDの乗用車が30度ちょっと。トラックやバスは45度以上)。切れ角が大きいのにハンドル径が小さいと、やはり一気に大きく切れることにつながるので、大径ハンドルの方がある程度ゆったり切れるので都合がいい。さらに、大径ハンドルにすることで適度な遊びができて、長距離運転で疲れないというメリットも!
もちろん人によって好みもあるだろうが、クルマの大きさ、タイヤのサイズ、切れ角、車体の重心などで最適なハンドル径はある程度決まってくる。そうしたことを実走テストで確認しつつ、パワステのセッティングも含め、どの車種でも同じような力でハンドルが切れるようにし、万人に使いやすいハンドル径として行き着いたのがメーカーの純正サイズというわけだ。
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June 14, 2020 at 05:00AM
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