★日本のアカデミズムを代表する機関「日本学術会議」が推薦した会員候補105人のうち6人が任命されなかった問題は、しんぶん赤旗のスクープだったが、一般紙も一部の社を除き積極的に報じた。人事の決裁は内閣府日本学術会議事務局から内閣府人事課を経由して首相官邸に上げられる。2日の野党合同ヒアリングで内閣府の担当者は「決裁文書で残っているものは推薦のあった105人のものと、99人を任命するという決裁文書だけだ」と判断は官邸だとした。

★国民の人気を得ようと携帯電話の値下げをぶち上げ、内閣記者にはパンケーキとオフレコ懇談で懐柔。政府にたてつく学者は日本のアカデミズムを代表しないと官邸はお墨付きを与えた。人事差配で権力をつかんだ首相・菅義偉の恐怖政治の始まりだ。学術会議への人事介入はほかの組織を震え上がらせるスケープゴートか、それともこれからなんでも批判するものを選んで排除していこうというのか。自民党が長く培ってきた保守の寛容さはこの政権にはないということなのか。

★一方、新聞はこの問題を極めて積極的に批判する。アカデミズムへの介入は言論界への介入の入り口だと考えたのか、新聞記者の天下り先と化しつつある大学教授の椅子を守ろうとしているのか。この間、幾つかの団体はこの人事の撤回を求める声明を出しているものの、大学単位など団体がまとまって政府に抗議しているようでもない。日本のアカデミズムは極めて閉鎖的で学術会議も政府からの10億円という予算で運営されている。それでいて人事介入されると大騒ぎだ。その中で論争というより闘争をしている排他的な組織でもある。菅政権が正しいとは言わないが、学術会議も政府の庇護(ひご)の下で学問の自由を語らず、自由を担保するためにこの際政府から独立したらどうか。(K)※敬称略