Pages

Thursday, August 26, 2021

工藤会死刑判決 組織犯罪の抑止効果は大きい - 読売新聞

hitagajah.blogspot.com

 市民への理不尽な暴力は許さないという司法の決意がにじんだ判決である。組織犯罪の効果的な摘発につなげたい。

 福岡県で一般市民が襲撃された4事件を指揮したとして、殺人罪や組織犯罪処罰法違反などに問われた特定危険指定暴力団「工藤会」の最高幹部2人に、福岡地裁が死刑と無期懲役の判決を言い渡した。

 一連の事件は1998~2014年に起き、1人が死亡、3人が負傷した。元漁協組合長は工藤会側の要求を拒否して射殺された。判決は「巨額の利権獲得をもくろみ、目的のためには手段を選ばない犯行だ」と指弾した。

 死者が1人の殺人で極刑を選択する裁判例は多くはない。判決は、身勝手な動機で市民を次々と傷つけ、地域社会に衝撃を与えた影響の大きさを重視したのだろう。

 被告らは判決後、「生涯後悔するぞ」などと裁判長を脅すような発言をした。法秩序に対する挑戦であり、断じて許されない。

 警察は、裁判を担当した司法関係者らの警備を強化したという。適正な司法手続きが、不当な暴力によって妨げられることがないよう万全の対策を講じてほしい。

 組織犯罪の捜査では、幹部が犯行を直接指示したことを示す証拠がなく、難航するケースもある。今回の最高幹部2人も、実行犯の組員に襲撃を命じていないなどとして、無罪だと主張していた。

 これに対し、判決は、延べ91人に上る証人尋問の結果を踏まえ、工藤会は厳格な上下関係が定められており、「被告らの承諾なく、組員が重大事件を起こすことは考えがたい」などと認定した。

 明確な物証がない中で、関係者の証言を積み上げ、暴力団の組織性と犯行動機を解き明かした。その手法は、今後の組織犯罪捜査の武器になる可能性がある。

 暴力団トップの刑事責任を追及しやすくなれば、暴力団の弱体化や組織犯罪の抑止を期待できる。各地の警察は今後、積極的な摘発に取り組んでほしい。

 近年は、暴力団が前面に出ず、「半グレ」などと呼ばれるグループが特殊詐欺などの犯罪を担うこともある。これらの集団は強固な上下関係に縛られないため、暴力団とのつながりを解明することが難しくなってきた。

 こうした状況に対し、特殊詐欺の被害者らが損害賠償を求めて民事裁判を起こし、暴力団トップに賠償が命じられるケースも出ている。あらゆる手段を講じ、暴力団の資金源を断つことが重要だ。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 工藤会死刑判決 組織犯罪の抑止効果は大きい - 読売新聞 )
https://ift.tt/3jkLmTR

No comments:

Post a Comment