素晴らしい勝利を収めたオリックスだが、それは日本シリーズで勝ち切る怖さの裏返しでもあった。レギュラーシーズンでも、チーム全体がどこかで「いけるぞ」という雰囲気になって、追いついたり、ひっくり返してきた。今シーズンが集約された1勝だった。

オリックス対ヤクルト  オリックスにサヨナラで敗れ、ベンチに戻るマクガフ(撮影・河田真司)
オリックス対ヤクルト  オリックスにサヨナラで敗れ、ベンチに戻るマクガフ(撮影・河田真司)

シリーズの怖さと言ったのは、両チームとも信頼して送り出した外国人投手が打ち崩されたことだった。8回はオリックス・ヒギンスが、同点から村上に中越え2ラン。9回はヤクルト・マクガフが1死も取れずにサヨナラ負けを喫したのは、もはや平常心でなかったからだろう。

マクガフが許した紅林の右前打、代打ジョーンズの四球は、いずれも追い込んでからの投球だった。続く福田のバントで慌てて三封を狙ったが、犠打野選になった。この時点で、心理状態は普段通りでなかった。無死満塁から宗の一打で同点にされ、吉田正にミートされたサヨナラ打だった。

オリックスは劇的な勝ちで、2戦目以降もヒギンスを起用しやすくなった。しかし、ヤクルトはマクガフを使うにしても心配しながらの投入になる。それだけ自滅だったマクガフの傷口は大きい。同じように失敗した外国人投手でも、大きな差になったということだ。

オリックス対ヤクルト 8回表ヤクルト無死一塁、ヒギンスは村上に中越え2点本塁打を浴びる(撮影・加藤哉)
オリックス対ヤクルト 8回表ヤクルト無死一塁、ヒギンスは村上に中越え2点本塁打を浴びる(撮影・加藤哉)

山本を先発に立てたオリックスは、絶対に勝たなければいけなかった。山本のペースでは投げられなかったが、上々だった。ただオリックスは、ヤクルトに手ごわい印象をもったのも確かだ。大きく流れを引き寄せたが、ここからさらに勝ち切っていくのが難しい。

このシリーズ前に、継投のタイミングと人選をポイントに挙げた。それと「DH」の戦い方。1つのミスは命取りになる。本拠で先勝したオリックスは、この流れを大切に戦いたい。

(日刊スポーツ評論家)