会社に対して不満だらけなのにもかかわらず、なぜ日本人は転職しないのだろうか(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
日本で働く人は、他国に比べて職場への不満があらゆる項目で大きいが、会社を辞めたい人は限定的である——。
日本・アメリカ・フランス・デンマーク・中国で実施した、民間企業で働く30代・40代を対象とする「5カ国リレーション調査」で、こんな結果が明らかになった。不満だらけにもかかわらず、なぜ日本人は転職しないのか。
社員は不満だらけなのに、会社を辞めない
まず、今の個人と企業の関係を調査のチャート図で見ておこう。
個人と企業の関係を調査した結果、5カ国中、日本人が最も会社に対して不満を抱いていることが分かっ
出典:リクルートワークス研究所「5カ国リレーション調査」(2020)
一見してわかるように、日本(赤色)の波形だけが、明らかに他の4つの国に比べて小さい。
日本は、「会社の経営理念に共感している」も、「仕事にのめりこんでいる」も、「給与に満足」「仕事の人間関係に満足」も、他国よりスコアが小さい。その結果、「今の会社で長く働きたい」のスコアも、5カ国最低である。
日本で働く人は不満だらけというこの結果は、それだけで私たちを暗澹たる気分にさせるが、衝撃的なのはそこではない。
この調査結果によると、日本の働く個人は不満だらけにもかかわらず、「今の会社を辞めたい」というスコアだけは、他国と同じ水準ということ。
本来これだけ会社や仕事に不満があれば、「今の会社を辞めたい」のスコアは飛び抜けて高くなるはずにもかかわらず、そうはなっていない。これは、日本では他国ほど転職環境が整っていないためとみられる。
社員からすると、今の職場は不満だらけ。長く働き続けたいとは思わないが、辞められないから留まるしかない。
企業からすると、経営理念に共感しておらず、仕事にのめりこんでいるわけでもない、もっといえば長く働き続けたいとも思っていない社員が、辞められないからと居続ける。
居続けるなら頑張ってほしい。やる気がないなら辞めてほしい。それが企業の本音だろう。
エンゲージメント人材が倍増は「かかわり」次第
リクルートワークス研究所が調査した結果、日本では「職場のかかわり」が充実していると、エンゲージメント人材の出現率が倍以上に増加することが判明した(写真はイメージです)。
Getty Images/Ryouchin
一般的に、会社が求めているのは、経営理念に共感し、仕事にのめりこんでくれる、そんな人材だろう。「仕事にのめりこんでいる」というのは、社員のエンゲージメントを測定する代表的な項目だ。
ところが、米ギャラップ社の「エンゲージメント調査」では、日本は「熱意あふれる社員」が6%しかおらず、139カ国中132位と、ずばぬけて低い結果に。
エンゲージメントは、2019年の労働経済白書で取り上げられるなど、近年、組織・人事に関心のある人にとって注目の指標となっている。
そこで筆者らリクルートワークス研究所では、経営理念に共感し、仕事にのめりこんでいる「エンゲージメント人材」の割合が高くなる要因を探った。
その結果、「職場のかかわり」が充実していると、どの国でも「エンゲージメント人材」の割合が増加することが明らかになった。
とくに日本ではこれが顕著で、職場のかかわりが充実していると、エンゲージメント人材の出現率が8%から17%と倍以上に増加する。
ここでいう職場のかかわりとは、「仲が良く楽しいチーム」「目標に向かって努力するチーム」「キャリアアップを支援する上司」「一人ひとりのスキルや才能が尊重されている」などの総合点。職場の居心地や、円滑なコミュニケーションを指している。
「仲の良さ」と「成果の追求」を両立できるか?
読者の皆さんは、「仲が良く、努力するチーム」も「個性を尊重し、キャリアアップを支援する上司」も、当然だと思われるかもしれない。少なくとも頭のなかで理想を想像すれば、誰もが「仲が良く、努力するチーム」や「個性を尊重し、キャリアアップを支援する上司」を思い描くだろう。
ところが現実には、そのようなチームや上司は少ない。成果を追求しすぎてチームの一体感が損なわれていたり、逆に仲良しクラブになっていて十分な成果をあげられていなかったり。
実際、調査結果でも、会社から得ているものとして、「仲が良く楽しいチーム」と「目標に向かって努力するチーム」の両方をあげる割合はわずか2%、「一人ひとりのスキルや才能の尊重」と「キャリアアップを支援する上司」の両方をあげる割合もたった1%しかなかった。
メンバーの個性の尊重やチームの一体感という「ありのままの受容」と、成果を出すための努力や個人のキャリアップという「目的の追求」 は、マネジメントにおいて反対を向きやすい。
とくにマネジメントに効率性を求められるなかでは、それらを両立するのはそう簡単な話ではない。
ありのままの自分で共に目的を追求できる職場が最強
ありのままでいられるだけでなく、共通の目的を追求するチームが最も望ましい(写真はイメージです)。
Getty Images/ RunPhoto
実際、ありのままでいられて、共通の目的を追求するチームだと、個人の満足度は一気に高くなる。
どんな人間関係が、個人にとって最も豊かかを示すのが、次のレーダーチャートだ(図2)。ここでは、「ありのままでいることができ、困ったときに頼ることができる」人間関係をベース・リレーション、「ともに実現したい共通の目標があり、目的を共有する仲間である」人間関係をクエスト・リレーションと呼んでいる。
ベース・リレーションの方がクエスト・リレーションよりも高い満足度を与える。一見クエスト・リレーションは不要に見えるが、両方を兼ね備えることで、満足度は最大化される。
出典:リクルートワークス研究所「働く人のリレーション調査」(2020)
見てもらうとわかるように、目的の追求だけのクエスト・リレーションでは、個人が安心や喜び、成長、展望といったものを得られる可能性は最も小さい。それに比べると、ありのままの自分でいられるベース・リレーションのほうが、安心や喜びが得られる割合があがる。
だが、一番いいのは、ありのままでいられて、共通の目的を追求するベース&クエスト・リレーションだ。ベース&クエスト・リレーションになると、あらゆる項目を得られる可能性がベースやクエストだけのつながりよりも格段に高くなる。
心理的安全性、人間関係重視の流れ復活
1990年代以降、会社は成果主義を導入するようになり、業績を重視するマネジメントが浸透した。しかしここに来て、心理的安全性など職場の人間関係を重視する流れが復活しつつある。今回紹介した調査の結果も、こうした変化とリンクしている。
個人にとっても組織にとってもマイナスな「不満だらけなのに転職できない」関係を抜け出し、個人がイキイキと働き、企業も高いパフォーマンスを出せる“Win-Win”の関係を生み出すには ——。
「ありのままの受容」と「目的の追求」という逆を向きがちな2つを両立させるマネージメントが鍵を握ると言えそうだ
(文・中村天江)
中村天江:リクルートワークス研究所主任研究員。博士(商学)、専門は人的資源管理論。「労働市場の高度化」をテーマに調査・研究・提言を行う。「2025年予測」「Work Model 2030」「マルチリレーション社会」等、未来の働き方を提案するプロジェクトの責任者や、政府の委員を歴任。著書に『採用のストラテジー』(単著)、『30代の働く地図』(共著)などがある。
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June 02, 2020 at 03:03AM
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