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Sunday, July 12, 2020

強まるトランプ再選への逆風と高止まりする恐怖指数 - 日本経済新聞

混迷を深める世界経済や国際秩序。時代の先を読み解くヒントを、トルコ出身のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏が独自の視点から解説します。

■コロナ第2波が点した再選への黄信号

トランプ米大統領の再選に黄信号が点っています。6月下旬の各社世論調査での支持率は、大票田のフロリダ州などの「スイングステート」で民主党の大統領候補、バイデン氏に大差をつけられています。スイングステートとは、大統領選挙のたびに共和党と民主党の勝者が入れ替わる州です。勝敗の鍵を握るこれらの州でのトランプ不利が鮮明になりつつあります。

背景にあるのは新型コロナウイルス感染拡大の第2波です。全米の新型コロナの新規感染者数は7月上旬、過去最多となる1日当たり6万人超となりました。経済活動の再開を急いだ共和党の知事がいる州で、被害が目立っているのが特徴です。結果、共和党支持が強い南部のテキサス州でさえ、トランプ大統領はリードを許しています。感染拡大の防止より経済活動を重視してきたツケが回ってきたというわけです。

もちろん、感染拡大の理由は経済活動の再開だけではありません。白人警官による黒人暴行死事件に端を発する、反人種差別デモもこの一因とされています。ただ、第2波を受けてロックダウン(都市封鎖)の再度の実施となれば、経済活動は再び大きく落ち込みます。こうしたことへの懸念と不満が、トランプ大統領の不支持につながっているのが現状です。

■コロナ第2波で崩れた再選シナリオ

実のところ、第2波が本格化する6月中旬まで、私は大統領選はトランプ大統領が優位だと考えていました。世論調査でバイデン氏有利が伝えられていたにもかかわらず、です。

エコノミストのエミン・ユルマズ氏

エコノミストのエミン・ユルマズ氏

理由は反人種差別デモの過激化にありました。一部でデモの参加者が暴徒化したことや、シアトル(ワシントン州)でデモ隊が「自治区」設立を宣言したことに対しては、保守派のみならず中間層からも批判の声が高まりました。極左団体がこれに関与しているとの指摘もあります。

民主党はデモに対して好意的ですが、彼らが左に寄ったと判断した中間層がトランプ大統領への支持を強める可能性は決して低くはなかったのです。

トランプ大統領はこうした「民衆の敵」に対する攻撃がめっぽう得意です。誰かを敵と設定して民衆の感情に訴えかけることで、彼は2016年の大統領選に勝利しました。今回もトランプ大統領は暴徒化したデモ隊に「テロリスト」のレッテルを貼り、大統領選を「テロとの戦い」と定義付ける方針だったのではと推測します。

ところが、予想以上の第2波の強さがこのシナリオを崩そうとしています。トランプ大統領の泣きどころは、防疫や経済といった専門的な話です。人種差別などの問題がクローズアップされれば、お得意のレッテル貼りで対応できたかもしれません。しかしあまりに急激な被害の拡大と、それが経済活動を優先した自身の政策からきていることで、争点が防疫と経済という不得意分野へと移ってしまったのです。

本来なら、コロナ禍はトランプ大統領にとって追い風になるはずでした。その事態の深刻さから、一種の「戦時」に近い政治状況になっていたためです。多少の景気悪化があっても、危機時には安定とリーダーシップを民衆は政治に求めるものです。しかし、経済が再び悪化する懸念が、その傾向を上回りつつあります。

■乱高下する米株式市場と民主党勝利の影

大統領選でのバイデン氏勝利は、一般に株式市場にはネガティブとされています。トランプ大統領は株式市場に対しては株高を働きかける政策を終始取っていただけに、これがなくなるとなれば売り材料です。6月の米株式市場は乱高下しましたが、その背景の一つにトランプ大統領の支持率低下があるとみています。

では、このままバイデン氏の勝利となるのでしょうか。仮にコロナ禍の被害拡大が続き、大きな事件などが起きないのならば、その可能性はかなり高いと思います。バイデン氏の政策はいまだに明確に見えておらず、「反トランプ」以外の軸がない状態です。その不透明感の強さが、米VIX(恐怖指数)の高止まりにも表れているように思います。

ここからのトランプ大統領の逆転はあるのでしょうか。鍵は前述した反人種差別デモにあるとみています。デモがさらに過激化するようなことがあれば、トランプ大統領は「デモに協力的な民主党はテロリストの味方である」とのレッテル貼りを本格的に使えるようになります。そうなれば、コロナ禍の第2波の到来で失った中間層の支持を取り戻せるかもしれません。

■トランプ再選と株高は「敵失」頼みか

バイデン氏自身のスキャンダルも無視できません。米中対立の激化が懸念される中、彼の息子が中国の投資会社の取締役を務めていたという事実は、トランプ氏にとっては格好の攻撃材料です。発言に不安定さが見られるバイデン氏だけに、新たなスキャンダルが発覚すれば、大統領選前のテレビ討論会で潮目が再び大きく変わることもあり得ます。

とはいえ過去の大統領選では、選挙前にここまで景気が悪化した事例で現職か与党の候補者が勝利したことはかつてありません。6月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比480万人増と市場予想を上回りましたが、それでも景気低迷の長期化は必至です。

雇用統計で一度は高まった経済のV字回復期待は、コロナ禍の第2波で急速にしぼみつつあります。私はトランプ大統領の支持者では必ずしもありませんが、彼の再選とそれに伴う株高は、「敵失」次第という状況になってきました。

エミン・ユルマズ
トルコ出身。16歳で国際生物学オリンピックで優勝した後、奨学金で日本に留学。留学後わずか1年で、日本語で東京大学を受験し合格。卒業後は野村証券でM&A関連業務などに従事。2016年から複眼経済塾の取締役。ポーカープレーヤーとしての顔も持つ。

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