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Wednesday, September 30, 2020

霊魂は科学? オカルト教養の宝庫『恐怖新聞』再び - 読売新聞

・つのだじろう『恐怖新聞』(秋田書店、全9巻)

 東海テレビ・フジテレビ系で放送中の深夜ドラマ『恐怖新聞』が面白い。

 京都で一人暮らしをする女子大生・小野田()(づる)(白石聖)の部屋に、不気味な新聞が届き始める。そこには、近い未来に彼女の周囲で起こる様々な惨劇が予言されていた。1日読む度に寿命が100日縮まる「恐怖新聞」は、購読契約を他人に押しつけない限り、配達を止めることができない。絶対外れない予言は、親しい人たちをも狂わせていく。詩弦は、「恐怖新聞」の呪いから逃れることができるのか……。

 ドラマを見ている世代の大半は、もう知らないかもしれない。原作は、つのだじろうさんが1973年夏から「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)に連載した同名マンガだ。同年秋から「週刊少年マガジン」(講談社)で始まった『うしろの百太郎』(講談社漫画文庫、全6巻)と共に「オカルト心霊マンガ」というジャンルを打ち立てた記念碑的名作である。

 1973年は、日本のオカルト史にとって特筆すべき年だった。3月に小松左京さんの『日本沈没』(光文社)が刊行され、年末に映画公開。11月には五島勉さんの『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)が出ている。この年の10月に、第4次中東戦争のあおりで「石油ショック」が起こった。高度成長の夢が覚め、未来を見通せなくなった社会の不安が、世界終末論やオカルト志向を一層加速させたのかもしれない。

 放送中のドラマ版は、「恐怖新聞」というアイテムが共通なだけで、物語的にはほとんど別物といっていい。オリジナル版の主人公は、()(がた)(れい)という中学生。この科学時代に、幽霊なんかいるものか――そう信じて疑わない鬼形の部屋に、毎夜「恐怖新聞」が配達されるようになる。窓と雨戸を閉め切っても、新聞はそれらを突き破って侵入してくる。このシーンに仰天した読者も多いはずだ。

 私は13歳だったが、リアルタイムで読んだ本作は、とにかく強烈だった。ジャンルとしては「恐怖・怪奇マンガ」だが、他の作品とは次元の違う迫力。その理由は明確で、本作においては、霊の存在が「科学的事実」だとされているからだ。つのださん自身が心霊研究家であり、霊魂も実際に見たという。だから、霊が引き起こす怪異現象が、報道やドキュメンタリーに近い手法で描かれている。まさに「新聞」なのである。

 こう書くと、「ああ、“トンデモ”のたぐいね」と思われるだろう。1979年創刊の老舗オカルト雑誌「ムー」を連想するかもしれない。オウム真理教事件以来、こうしたアヤシゲな「疑似科学」に対し、厳しい疑いの目が向けられるようになった。そのこと自体はまったく正しいと思う。

 『恐怖新聞』は、47年も前の作品だけに、さすがに古さが目につく。むやみに怖がらせすぎるところも多い。しかし、別の部分では、今だから理解できる、感心できるところもある。

 本作は、ある意味で正統派の「教養マンガ」である。「恐怖新聞」の目的は、霊魂を信じようとしない鬼形の無知、ひいては私たち読者の無知をひらくことにある。霊魂の存在は、すでに世界の常識で、<がんこに信じようとしないのは日本人だけだといってもいいほどだ>と、新聞配達人の霊は言う。彼は悪霊だが、霊界の知識を授け、鬼形の手助けさえすることもある。

 読者は、鬼形と一緒に「恐怖新聞」を読み、吸血鬼、UFO、雪男、ツタンカーメンの呪い、四谷怪談、地球空洞説、不幸の手紙、悪魔()き……ありとあらゆる東西オカルトの現代的解釈を学んでいく。つのださんは、可能な限り情報の出所を明らかにし、わからないことはわからないと書く。このあたりは誠実だ。

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