この記事をざっくり説明すると…
- アメリカ空軍とロッキード・マーティン社が共同で、レーザー兵器を2025年までに戦闘機に搭載する計画を進めています。
- このTALWSと呼ばれるシステムが完成すれば、「戦闘機からミサイルを迎撃することも可能になる」と言います。
- 費用の面で無理がないのか…。そして、本当に必要なのかも含め、これから見極められていくことになるでしょう。
注目のレーザー兵器「TALWS」
アメリカ空軍は2020年代半ばまでの実装を目指して、戦闘機用レーザー兵器の開発を進めています。「TALWS」と呼ばれるこのレーザー兵器を用いて、飛んでくるミサイルを迎撃するのが目的です。まずは、ステルス性能のない既存の戦闘機の防御用として、装備されるのではないかと見られています。
今回、用いられているシステムのTALWSとは、「Tactical Airborne Laser Weapon System(戦略的空挺レーザー兵器システム)」の頭文字を取ったものになります。軍事関連の情報ウェブメディア「ナショナル・ディフェンス(National Defense)」の記事によると、TALWSはポッドマウント型(既存の機体などに追加で装着する方式)のレーザー兵器となる予定。開発を担当しているのは、アメリカ空軍研究所からの委託を受けたロッキード・マーティン社になります。
もしTALWSが戦闘機に装備されれば、“空対空”および“地対空ミサイル”の撃墜が可能になります。また、アメリカ空軍の自己防衛高エネルギー・レーザー・デモンストレーターである、「SHiELD(Self-Protect High Energy Laser Demonstrator)」と呼ばれるシステムとの連動も想定されています。
現在の戦闘機は、敵からのミサイル攻撃に対しては受け身にならざるを得ません。操縦する戦闘機が敵側から狙われた場合、パイロットは回避行動を取って追尾するミサイルの照準を外したり、発光弾を発射しミサイルの赤外線探査を逃れたりするなどの対処法が考えられます。また、「チャフ」と呼ばれるヒモ状のアルミ箔を散布することで、ミサイルのレーダー誘導を妨害するという逃げ方も考えられます。これらは映画で描写されてもいるので、イメージできる方も少なくないでしょう。
そして、今後このような迎撃用のレーザー光線が完成すれば、空中戦の歴史において初めてとなる、真の「能動的な」ミサイル防衛が可能になると言えるでしょう。
「TALWS」が搭載される見込みのある戦闘機は?
先述のとおりTALWSは、ポッドマウント型システムとなるため、通常であれば搭載すべきミサイルや爆弾や探知ポッドを搭載するための場所を奪うことになります。さらにステルス性能を持つ戦闘機は、レーダーに感知される信号などを極力減らすように注意深く設計されている点を考えると、F-22ラプターやF-35ジョイントストライクファイターといったステルス性能を備えた戦闘機への装備としては適していないかもしれません。
TALWSの搭載が予想される戦闘機は、次のとおりです。
- F-15E
- F-15C
- 新型F-15EXイーグル
- F-16ファイティング・ファルコン
そして恐らくA-10Cワートホッグなどの、姿を隠す術(ステルス技術)を持たない戦闘機となります。1発のミサイルや爆弾を装備する代わりとして、敵のミサイルをいくらでも撃ち落とすことのできるレーザーを搭載するのに迷う必要などないでしょう。
映画『スターウォーズ』に登場するR2D2タイプの人工知能(AI)によって制御されたTALWSを、チャフやフレア(発光弾)といったミサイル防御と組み合わせることで、軍用機を守る任務を負う…そんな光景を目にする日が訪れるのも、そう遠くはないかもしれません。
レーザー兵器に弱点は?
レーザーが、空中兵器として役立つことは間違いと言えるでしょう。エンジンの動力を利用して充電が可能であり、何発撃とうとも弾薬・弾倉などを積む必要もありません。発射されたレーザーは光速で、敵ミサイルの誘導装置を照射して無力化してしまうというわけです。
しかしながらレーザーも、決して無敵ではないようです。特に水蒸気や煙など、大気中を漂う粒子によって強度が希釈されてしまうという弱点もあります。また、標的との距離が遠くなればなるほど、レーザーの威力は弱まってしまうのです。
さらに、レーザー攻撃が威力を発揮するためには、高速で飛行するミサイルに対して十分な時間、照射し続けなければなりません。爆発による破壊力を一瞬で発揮するミサイルとは異なり、レーザー攻撃の効果を得るには一定時間の安定したレーザー光線の照射が不可欠となるわけです。といいうことはつまり、超高速で移動するミサイルをレーザー光線で迎撃することは、そう簡単なことではないでしょう。
また、TALWSのようなレーザー防衛システムの開発は、想像以上に難易度が高いことも事実です。その理由として、ミサイルを探知・追尾し、撃墜する能力が全てパッケージされたポッドをつくり出さなければならないことが挙げられます。ミサイルの電子部品や装甲、誘導システムを破壊するためには、十分な威力を発揮するレーザー光線が必要となります。TALWSの出力レベルは明らかにされてはいませんが、『ディフェンス・ニュース(Defense News)』誌の記事によれば「数十キロワット」と伝えられています。
レーザー兵器の展望は?
とは言え、航空機用レーザーの歴史はまだ始まったばかりです。いずれ開発が進めば、TALWSのような兵器は爆撃機から空中給油機に至るまで、防御を必要とするあらゆる軍用機に搭載されるようになることが見込まれています。
レーザーの威力が増していけば、例えば敵機本体のように、より大きく複雑な目標に対して有効な武器にもなり得ます。地上の標的にも向けられるようになれば、「発射された弾道ミサイルを撃墜することも可能になる」と一部の専門家は期待を寄せています。
これまで100年以上にわたり、戦闘機は機関銃や機関砲などの実弾を武器としてきました。なのでそろそろ、直射型の兵器として理想的なレーザー光線にその役目が取って代わられる日が訪れても、決して不思議ではありません…。
現時点でレーザー兵器を指して、「万能である」と豪語するのは大きな間違いであることは確か。ですが、この兵器が極めて幅広い用途を秘めていることは事実です。どのように用いることが現実的で、また費用の面で無理がないのか…。そして、本当に必要なのかも含め、これから見極められていくことになるでしょう。
Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。
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