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Friday, January 21, 2022

EU離脱1年 英国が払った代償は大きい - 読売新聞

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 英国の欧州連合(EU)離脱が完了して、1年が経過した。英国民は、モノとヒトの移動の自由を保証する単一市場から離れた代償の大きさを痛感しているのではないか。

 英国とEUは2021年1月から、自由貿易協定に基づく新しい関係に入った。両者の貿易に関税はかからないが、新たに発生した通関手続きが企業のコスト増を招き、貿易は縮小傾向に陥った。

 英国の貿易量は、EUに残留していた場合の推計値と比べ、1割以上押し下げられたとされる。

 ジョンソン英首相は、EUから離脱しても、貿易は円滑に行われると強調していた。楽観的に過ぎる見通しを語り、混乱と失望をもたらした責任は免れまい。

 新たに導入した移民規制の政策で、EUからの低賃金労働者が減ったことは、国民生活に深刻な影響を引き起こしている。

 昨年秋にはトラック運転手が不足してガソリン供給が滞り、大きな社会問題となった。介護の人手も減って、サービスが低下している。食肉加工など同様の問題を抱える分野は多い。

 新移民制度は、就労ビザの発給に際して、英語力、仕事の技能、勤め先の確保などをポイント化して判定する。離脱前はEU加盟国から自由に移住できたのに比べ、高いハードルが課せられた。

 背景には、EUに残留するか、離脱するかを問うた16年の国民投票で、移民制限を求める声が離脱派の追い風となったことがある。東欧からの移民の増加により、英国人の雇用と福祉が圧迫されるという不満が大きかった。

 労働力不足が目立つ現状には、低賃金労働を担う移民が不可欠なのに、移民制度を急激に変えた弊害が表れている。企業の競争力や社会の安定を維持するには、より柔軟な制度が必要ではないか。

 世論調査では、「離脱はうまくいっていない」との回答が約6割に達した。国民投票で離脱票を投じた人でも4割を占めるなど、失望感が広がっている。

 英政府は、離脱によって可能となった独自の政策を、長期的な成長につなげられるかどうかが問われている。環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請や、インド太平洋諸国との関係強化はその試金石となる。

 欧州では英国の離脱問題の影響などでEU懐疑論が広がり、離脱の連鎖が懸念されたが、英国に続く国は出なかった。国民投票から現在に至る英国の混乱が各国の国民に教訓を与えたのだろう。

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