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Saturday, August 13, 2022

大野で豊富な化石産出 大きいアマチュアの役割 大野地球科学研究会会長・川田信行 エッセー時の風 | 社会 | 個人 | 福井新聞ONLINE - 福井新聞

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2022年8月14日 午後2時00分

 前回は、大野盆地を含めた日本列島の出来方のお話をしましたが、今回は、遅まきながら大野ではどんな化石が、また、なぜ採れるのかをご紹介します。日本列島の完成は、地球46億年の歴史から見ればごく最近のことなので、各所で新生代(6600万年前~現在)の化石が採れることは容易に想像できますね。ところが大野では、約4億年前の古生代シルル紀から1億3000万年前の中生代白亜紀前期まで、とても幅広い年代の化石が採れるという点で、全国トップレベルを誇っているのです。

 古生代の代表的な化石は、主に石灰岩から採れる、ウミユリ・放散虫・三葉虫・サンゴ・腕足類・フズリナ等です。古生物で驚くのは、何億年の時を経ても、その仲間を今に残している者がいることです。例えば、ウニやヒトデの仲間になるウミユリは、今でも数百種類いて、100~数千メートルの深い海に生息しています。中生代末に滅んだと思われていた恐竜も鳥に進化して、今も大繁栄していますね。では、霊長類の長と自負する私たち人間はどうか?真剣に考える時が来ているように思います。

 ところで、大野で古生代の化石が採れる理由ですが、これが少しややこしいのです。想像してみましょう。約4億年の昔、遠く南太平洋の暖かい海にいたサンゴやウミユリ・三葉虫等がその命を終えて堆積し徐々に化石となります。この間に、海側のプレートに載って化石を含む海山も北上(1年に僅(わず)か1センチでも、1億年で千キロ移動)、陸側のプレート下に沈み込む中で、海山は、当時大陸の東端にあった日本列島の基の岩盤に押し付けられて行きました。左官職人がコテをあてるようなイメージでしょうか。つまり、大野の古生代の化石は、数千キロの旅を経て運ばれて来たというわけです。

 一方、中生代の化石が採れる理由はどうでしょう。この頃、大野を含む北陸一帯は、浅い海や湖(古手取湖)を経て、やがて陸地となったため、これらの環境に適応した生物化石が採れるというわけです。代表的なものを挙げると、ジュラ紀中期~後期のアンモナイト・ベレムナイト・二枚貝・シダ植物、白亜紀前期の恐竜の歯や足跡・鳥類足跡・トリティロドン・亀・カワニナ・牡蠣(かき)・シジミ・植物等です。このような海生・陸生の多種多様な化石は、「手取層群」(北陸3県と岐阜県に分布)と呼ばれる泥や砂が堆積してできた頁岩(けつがん)や砂岩の層から採れます。

 こうしてみると、日本列島、特に大野市の地下が、まるでフランケンシュタインのような継ぎはぎ構造だからこそ、私たちは僅か半径10キロ圏内で、地質年代の大きく違う化石を含む露頭に足を運ぶことができるのです。仲間たちと草木をかき分けながら露頭に辿(たど)り着き、そこにアンモナイトや貝類の化石を見つけた時は、1億数千万年もの眠りから目覚めさせた喜びで、何とも言えない幸せな気分になります。半世紀近くもの間、化石採集を続けている理由がここにありますね。

 実は古生物学では、私たちのようなアマチュアが果たす役割がとても大きいのです。例えば1996(平成8)年に旧和泉村で発見された、当時世界最古級と言われたティラノサウルス類の歯化石は、愛知の公務員だった故大倉正敏氏が、遠路足しげく通い採取したものでした。中には、2015年発見のトリティロドン歯化石のように、採集巡検に訪れた東京の高校生が偶然見つけたものもあります。私たちは、これからもどこかに眠っているであろう希少化石を探し続けるつもりです。

 最後に耳より情報ですが、市の「ホロッサ」(化石発掘体験場)では、古生代から中生代の幅広い年代の化石を含む岩石が揃(そろ)っています。みなさんも一度足を運んでみると、大発見の機会に巡り合うかもしれませんよ。(8月7日福井新聞掲載)

⇒ふくい日曜エッセー「時の風」福井新聞D刊に最新回

 ◇かわだ・のぶゆき 1957年福井県大野市生まれ。新潟大学教育学部卒。福井県内の小中学校で教職に従事し、上庄中学校校長など務める。子どもたちの化石採集・自然体験活動支援も40年近く継続している。大野地球科学研究会会長、NPOオアシス協会、奥越ピカイチ会会員。現在、大野市内小中学校で指導力向上アドバイザーとして勤務。

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