日本銀行の中村豊明審議委員は31日、為替市場で円安が進行していることについて、「物価への影響という点でみると大きい。為替の動向と物価への影響をよくみていきたい」と語った。岐阜市で記者会見した。
為替は金利差だけで動くという単純なものではないとし、「中期的に考えれば、経済のファンダメンタルズに沿って収れんしていく。金融政策のターゲットには当然ならない」と指摘。円安は輸出企業やインバウンドなどにメリットがある一方、内需関連や家計にはネガティブな影響があると説明した。
植田和男総裁は、前回7月の金融政策決定会合で決定したイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の運用柔軟化に際し、金融市場のボラティリティー抑制について「為替市場も含めて考えている」と発言しており、市場では為替動向と金融政策運営の関連に注目が高まっている。
外国為替市場では、日米の金利差などが意識される中で29日の海外時間に一時1ドル=147円台まで円安が進んだ。
中村委員は、YCCの運用柔軟化に反対票を投じたことに関して、「出口戦略の一環ではなく、方法自体に反対したわけではない」と説明。市場の混乱によって中小企業の賃上げや投資に対する意欲がそがれる可能性を懸念し、「タイミングは今ではないと考えた」と語った。
その上で、柔軟化後の市場に「今のところ大きな混乱は起きていない」とし、むしろ市場機能が再び低下してしまうことが避けられていると評価した。YCC自体は「持続的な回復が続けば本来ならばいらない政策だ」としつつ、デフレマインドから脱しにくいムードが残っている現状では「今はまだその時ではない」と語った。
マイナス金利政策の解除など金融政策の正常化の条件については、物価上昇がコストプッシュ型から需要拡大に基づいたディマンドプル型に転換することや、持続的な賃金上昇が見通せることなどを挙げた。もっとも、そうした方向に着実に歩んでいるという状況変化が重要と述べ、機械的に判断できるものではないとの見解も示した。
他の発言
- ユニットレーバーコスト反映など欧米型GDPデフレーターになれば、政策正常化が可能に
- 中小企業の稼ぐ力、悪い方向には行ってない
中村委員は午前の講演で、物価の上昇が賃金上昇につながる前に金融引き締めに転換すれば、需要が抑制されて「企業の稼ぐ力が再び低下しかねない」と述べ、当面は現在の金融緩和を粘り強く続ける必要があるとの認識を示していた。
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