4万年以上前からスイギュウの角やイノシシの牙を洞窟の壁に描いてきたように、人類は、はるか昔から大きな「武器」をもつ動物たちに魅了されてきた。しかし、角や牙の威厳に執着するあまり、メスで起こっている驚くべきことに気づかなかったのかもしれない。2024年1月12日付けで学術誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」に掲載された研究で、哺乳類のオスで戦闘用や自分の健康状態を示す大きな武器が進化すると、同種のメスでは想定より脳が発達することが初めて示された。
これまではオスの頭の上ばかりが注目されてきたが、メスの頭の中でも同じように素晴らしいことが起こっているのかもしれない。そしてそれが、メスが交尾相手を選択する際にどれほど役立っているかについて、これまでの通説を覆す可能性がある。
「本当に重要な生物学の側面なのに、メスは見落とされがちだと思います」と、米モンタナ大学の博士課程に在籍し、この研究の筆頭著者であるニコール・ロペス氏は言う。「通常、メスは特徴がないというか、あじけないというか、(オスほど)凝っていないように見えるからです」
29種、400点を超える標本を分析
進化がより大きな角を選択するように見えても、オスの脳の大きさは変わらない。一方で、メスは脳の大きさにリソースを注ぐようだと、米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の進化行動生態学者で、この研究の最終著者であるテッド・スタンコウィッチ氏は言う。(参考記事:「シマスカンク、天敵が少ないとシマ模様がなくなる? 研究」)
武器と脳という2つの性質が直接結びついているかどうかはまだ不明だが(そうであればより多くのことがわかるのだが)、この研究は、これら2つに関連があることを示したのだ。(参考記事:「大きな鼻ほど強くてモテる、テングザルで判明」)
スタンコウィッチ氏、ロペス氏、そして共著者のジョナソン・ムーア・トゥパス氏は、これらの性質がどのように関連しているかのデータを集めるため、7つの博物館を訪れ、29種の有蹄類から413点の標本の頭蓋骨、脳容積、武器の大きさを測定した。その中には、シカやカリブー(トナカイ)、ヘラジカ(ムース)からヤギ、ヒツジ、レイヨウまで含まれていた。
「400点以上の標本を分析するのに何年もかかりました」とロペス氏は言う。
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からの記事と詳細 ( オスの「武器」が大きな哺乳類、メスは「脳」が大きい、初の報告 - ナショナル ジオグラフィック日本版 )
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